@phdthesis{oai:otemae.repo.nii.ac.jp:00002140, author = {潘, 小寧}, month = {2019-06-05, 2019-06-05, 2019-06-05}, note = {2018年度, とても古い時代から、人は犬と強い関わりをもってきた。その理由は、現代と異なり、人間が即座に入手できる情報や交信が限られていたからではないだろうか。たとえば、危険が迫ったときに、犬は即座に危険なもの(野獣や知らない人間)が迫ってきていることを教えて(交信)くれる。犬は現在のアラームの役割をしてくれるわけである。また、本稿のいくつかの章で詳しく述べるが、犬は主人である人間だけではなくて、人間の財産(たとえば遊牧民の羊など)をも守ってくれる。また犬はどこに獲物のウサギがいるかを教えて(情報)くれるだけではなくて、その捕獲に協力もしてくれるのである。このばあいは、情報や交信だけではなくて、労力提供もしてくれている。ただ、労力提供は犬の固有の長所ではなくて、人間が家畜化した他の動物がさらに得意とするものである。  犬は世界各地にひろく分布しており、人間が生活しているところには、必ずと言ってよいほど犬がいる。人間にとって犬は大切な仲間と言える。人間は犬に訓練をして、さまざまな種類の犬の中から特有の性能を見出すように努めてきた。とくに遊牧民にとっては、犬は不可欠であり、とても大切である。そのため厳密な訓練方法をもっている。  本論文は五つの章から成り立っている。第一章の「問題関心と研究史」は次のような内容となっている。すなわち、中国と日本の文献を歴史的にならべてみると、犬は現在のようなただのペットではないことが分かる。それを文化史的な視点から見ると、犬は人間に対して、価値観を共有する大切な伴侶のようである。ではなぜ、そこまでに大切な伴侶となったのかを考えてみる必要がある。犬は伝統的に人間よりも、霊力、超能力を持っていると信じられてきた。また実用的な面において中国では犬の肉食の文化ももっている。以上をふまえながら、次章から文化の面においても、とくに情報、交信、生活という側面に意を注ぎながら、文化史的な分析をした。  第二章は、「中国古代における犬と人間との関係」である。中国・古代(「古代」というのは文明が成立してから近古唐滅亡九〇七年)までの時代としてここでは設定をする)において、当時の中国人(とりわけ漢族)は犬をどのようにイメージしていたのか、文化史的視点からその特徴をあきらかにすることを目的としている。とくにこの章では、長い歴史をもつ中国の古代では犬がどのようにイメージされていたのかというやや始原的な関心から成り立っている。そこでは動物というものがもつ特殊な能力、また人間がそもそも犬とどのように付き合ってきたのか、犬殉葬、犬の予兆、神とかかわる犬、犬と水との関係、などを述べている。  第三章は、「中国遼[ 契丹] における犬と人間との関係」である。遼朝[ 契丹](907 年~ 1125 年)遊牧民をとりあげ、そこでの犬と人間との関係を文化史的にあきらかにすることを目的としている。遼朝を構成した契丹は遊牧民なので、遊牧動物の管理のために犬をもっている。それは、「契丹犬」とよばれる有能な犬である。遼朝時代において契丹人はどのような固有の犬に関わる習俗をもっていたのであろうか。契丹族の犬についての考え方を整理しておくと、契丹は伝統的にはシャーマニズムであり、その後、佛教が入ってきている。それを前提として、一つ目は犬は霊的な意味としてまとめられるものである。たとえば占星に犬が登場する。二つ目は実用性(狩猟・遊牧)からまとめられるものである。猟犬、恩犬としての犬などである。古代漢民族も遼代の契丹人も、犬は不可欠な生き物であり、同時に霊物でもある。とくに契丹人にとっては、犬についての一年間の祭祀は大切な年中行事でもあった。  第四章は、「中国[ 五代・宋元明清] 時代について犬と人間との関係」である。中国「五代・宋元明清時代」(五代十国9 07年-960 年、宋朝960 年-1279 年、元朝1271 -1368 年、明朝1368年-1644 年、清朝1636 年-1912 年)の時代を取り上げる。時代、宗教および朝代の違いによって、漢民族犬文化史的の立場から、犬は人間に対して、どのような変容をきたしたのかを明らかにした。子供に対する怖い犬や犬型の龍、犬食文化などをこの章であつかっている。 第五章は、「牧羊犬と狩猟犬に見るモンゴル牧畜民と犬との関係:内モンゴルバイリン右旗での聞き取り調査を中心に」である。中国の遊牧民、遼代の契丹族の犬についての分析をおこなった。それは当然のことながら、文献による研究であったが、文献に基づいているために、牧羊犬や狩猟犬について、知りたい事柄を十分に知ることができなかった。そこで、フィールドワークとして、現在の遊牧民族の調査を行うことにした。中国内モンゴルバイリン右旗の巴彥塔拉蘇木達蘭花において聞き取り調査を行った。伝統的な狩猟方法、牧羊犬トレーニングと猟犬の実行過程の両面からの聞き取りである。内モンゴルにおいては犬は牧羊犬が中心であるが、現実には、狩猟犬や番犬の役割もはたしていた。犬の養育もふくめて技術的な事柄も聞き取り得た。  結論的には、大きくは、犬は当初の予想よりも、信仰的な側面が強いことが分かった。もちろん、時代や地域によってその信仰内容は異なるのであるが、またおおまかな共通面もみられた。実用的には当たり前であるが、人間と犬との距離が大変近くて、親しさがあり、時代が現代に近づくほど愛玩犬としての役割が大きくなる。ただ、本来のこの距離の近さは、犬は人間がもっていない鋭い感覚(人間が感知しえない情報など)をもっていることに起因すると考えられる。}, school = {大手前大学}, title = {中国における犬と人間との関係の文化史的研究}, year = {} }